空飛ぶ映画レビュー

主に新作映画の感想を綴ります。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』の感想 誰一人としてつまらない人間なんていない。

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『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』の感想 誰一人としてつまらない人間なんていない。

監督:オリヴィア・ワイルド

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https://longride.jp/booksmart/

佇まいかっこよすぎだろ・・・。

公開日:2020年8月21日

鑑賞日:2020年8月30日

おすすめ度:★★★★★★★★★(9/10)

<あらすじ>

明日は卒業式。親友同士のモリーとエイミーは、高校生活の全てを勉学に費やし輝かしい進路を勝ちとった。ところが、パーティー三昧だった同級生たちも同じくらいハイレベルな進路を歩むことを知り驚愕。2人は失った時間を取り戻すべく、卒業パーティーに乗り込むことを決意する。

https://longride.jp/booksmart/


8/21(金)全国公開『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』/日本版30秒予告編

<感想>

予告を見た感じだと、馬鹿騒ぎギャグ映画かと思って観る気は全くなかったのですが、評判がいいので気になって観に行きました。口コミって大事!!「バカ騒ぎギャグ映画」には変わりなかったのですが、ベーシックな青春コメディの要素をベースに、新しい世代の価値観でストーリーが進み、軽快な会話と魅力的なサブキャラたちの魅力に、始まって数分で没入!!気軽に観られるのに、メッセージ性もしっかりとあって大満足の映画体験でした。

新宿武蔵野館で鑑賞しましたが、この時期にも関わらず満席。高校生くらいの子からおじ様の世代まで幅広く。女性のお一人様が多い印象でした。プロモーションをそこまで売っている印象は無いのに、すごいなぁ。

 

こういうコメディの映画だと容姿や人種、セクシャリティを揶揄するようなギャグ・悪口がバンバン飛び交う印象なのですが、この映画に限ってはそういった表現が一切なかったことが良かったです。主人公モリーは学校で嫌われているのですが、彼女のことを「堅物」とは言っても、デブ、ブスと悪口を言う人は出てきません。エイミーもレズビアンで2年前にカミングアウト済みという設定なのですが、それについては一切問題となっていないのです。
高校生活を満喫して遊んでいる奴らを馬鹿にして見下しているのは主人公のモリーとエイミーだけで、いわゆる一軍の子たちは彼女たちを一切差別していない。今まで当たり前みたいに描かれていたスクールカーストさえも無いんですよね。

「いつまでスクールカーストとか言ってるんっすか?」という ふわちゃんの声が聞こえてくるようです。

 

物語は、青春を勉強だけに捧げ、いつか遊んでいる奴らを見返してやろうと思っているモリーが、実は見下していたパリピの奴らも自分と同じレベルの大学に普通に合格していたことを知り、「すべてを犠牲にしてきた私の努力は何だったんだ」と絶望するところから始まるのですが、その展開がコントのようでゲラゲラ笑えます。
海外のジョークが苦手な人も多いと思いますが、この映画は、古典的で日本人にもなじみがある種の笑いが多いので、楽しくみられると思います。実際映画館でこんなに笑い声が聞こえるのは初体験でした。

 

また、キャラクター数は多いのですが、どのキャラも登場するシーンは短くともどのキャラも深みがあって、必ずお気に入りの子ができるはず。
私はモリー・ゴードン演じる一軍の”やりマンちゃん”が好きですね。物語的にも重要なキャラクターなのですが、思い返すと2シーンぐらいしか出てきてないんですよね。それなのに彼女の抱えているであろう苦しみとか、2面性が違和感なく描かれています。

 

主人公のモリ―は、これまで学校の遊んでいる奴らを軽蔑して理解しようとしてこなかったのですが、1晩の出来事で変わっていくわけです。
こういう経験って僕にもあって、友達なんていないと思っていた地元に帰って久しぶりに同級生とフラットに話してみると、案外嫌ってたやつが面白かったり。立場の違いとか、思い込みとかであいつはこういうやつだと分かった気になって、知ろうとしないのはもったいないなとこの映画を見て思いました。
それは自分自身にも言えることで、「自分なんてこの程度」「自分はこういう人間だ」という自分で自分に張ったレッテルを剥いでいくモリ―とエイミーの姿を見ていると、まだまだ自分にも可能性があるのかもしれないと、希望が持てる。
説教くさくなってしまいそうなメッセージ性をカラッとした笑いの中に織り込んで、エンターテイメントにして観せてしまうんだからすごい。

 

クライマックスの卒業式のシーンは涙必至です。
僕も校庭でスーパーヒーローの到着を待っている気分だった。

誰一人としてつまらない人間なんていない。

longride.jp

 

 

 

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